草太と花子２

毎日暑いね。
でも、もうすぐ学校は夏休みだよ。
なが～いお休みのあいだ、なにしようかな？

まずは　おばあちゃんのところへ行くつもり。
だってね、きょう、
おばあちゃんからハガキが届いたんだ。
「夏休みになったら　みんなであそびに
きてね。まってます。」って書いてあった。

あら、暑中見舞い（しょちゅうみまい）ね

おばあちゃんからのハガキにはとてもきれいな
アサガオの花がついていた。
ほんものみたいだけど、紙でつくった
お花が貼ってあるんだ。

和紙（わし）のちぎり絵　　っていうのよ

ぼくのいもうとの花子は
「わぁ～　きれい！わたしもやってみよう！」
って、おばあちゃんのハガキをまねして
アサガオの貼り絵にちょうせん中だ。

「できたっ！おにいちゃん見て。・・・あれ～？
おばあちゃんのアサガオとなんだかちがうなぁ」

いもうとは、自分で気がついて
ちょっとしょんぼりしちゃった。

う～ん、おばあちゃんのアサガオは
紙を手でちぎってあるんだもの。

まわりが　ボサボサだけど、でもそれが
なんとなくやさしい感じなんだ。

「花子のアサガオは、ハサミで切ってつくったから、
感じがちがうんだよ」ってぼくが言うと、花子は
「わぁ～　だいしっぱいだ～」と泣きそうになって
貼り絵を食べちゃおうとしたんだ。

ぼくは、あわてて
「あーっ、花子、だいじょうぶだよ。
ハサミで切りぬいたアサガオは、
すっきりしているよ」と、はげました。
ぼく、なかなかうまいことを言ったなぁ。

花子のアサガオも　すてきな切り絵ね！

それにしても紙をちぎると、
ちぎったところがケバケバになるよね。

ちぎることで、でてくるケバケバ・・・
このケバケバを虫めがねで見ると
細い１本１本の線でできているみたい。

「あーっ!?　もしかして
この１本１本が　『センイ』なのかな？」

「ただいま～」
あ、おとうさんがおしごとからかえってきた。

みんなで夕ごはんを食べたあと、
ぼくは、おとうさんにきいてみた。

「おとうさん、このあいだ『紙の流れ目』っていう話を
してくれたでしょう？　そのとき『センイ』の流れって
言ってたよね。


きょう、おばあちゃんから絵はがきが届いたんだ。
このアサガオの花のふちのケバケバが
つまり『センイ』なの？」

「おーっ！草太はすごいことに気がついたね。
そのとおり！『センイ』というのは大ざっぱに言うと　
細い糸のようなもの。

木や草から取り出した『センイ』を水の中に散らして
金網や、すだれで水をこし、薄く平らにしてから
乾燥させたものが『紙』なんだよ」

「木から『センイ』を取り出すといっても、家では
なかなかできないよね。

工場では、大根おろしをつくるみたいに木材を
すりおろしたり、薬品を使う方法で『センイ』を
取り出して集め、紙の原料となる
パルプというものをつくっているんだよ」

「紙はセンイどうしがからまりあってできているのではなくて、
水が仲立ちをしてぴったりくっつくことによって
結びついているんだ。

だから、水の中に紙を入れれば結びつきが
とれて、センイはもとのようにバラバラになるんだ」

そうか、おとうさんのシャツは洗たくしてもバラバラにならないけど、
うっかりポケットに入れたままのティシュペーパーはバラバラになるものね！

ふーん、紙をちぎると見えてくるこの１本１本の
細かいセンイが、もとはどこかの山の森の
木の中にあったものなんだね。
紙って、森の木からできているんだ。

そういえば、おばあちゃんが使った　
きれいな紙のことをおかあさんが和紙（わし）
って言ってたっけ。

和紙って日本の紙のこと？

日本でつくる紙はみんな和紙なの？

あ～ぁ、ねむくなってきちゃった。
またこんど、おとうさんにおしえてもらおうっと。